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生命科学を中心とした統合型理科教育に関する国際協力

愛媛大学
遠藤 弥重太

1. 概要

 本事業では主として中国、東 南アジア地区における高等学校、大学教養課程における生命科学分野を中心と した理科教育の内容、学生および教員の理解度、実習のための教材などの現状 を調査する。その調査分析結果をふまえたうえで、本学における教育研究実績 を活用して、調査対象地域に適した生命科学に関する理科教育プログラムおよ び実習・学習キットの開発を進め、当該地域における生命科学教育および理科 教育の充実に協力する。さらに内容の高度化、および汎用性の拡充によって、 我が国から世界に発信できる理科教育プログラムとし、既に実施されている理 科教育における国際協力プログラムと協調する方向性について検討する。

2. 目標

 先進国、開発途上国を問わず、食糧、医療、環境に関する問題が深刻化 する一方で、青少年の理科離れが懸念され、その解決には、生命現象を正しく 理解できる理科教育プログラムが必須である。生命活動はセントラルドグマと いわれる遺伝情報の流れを軸とした、物理や化学の法則に従った現象であり、 タンパク質の機能と多様性を学ぶことによって科学的思考力の習得も可能とな る。本学で実用化した無細胞タンパク質合成系は、生きた細胞を使わず試験管 内の反応を利用してタンパク質を合成できるため、セントラルドクマの理解お よびタンパク質の特性を学ぶ上でも画期的な技術である。本事業ではこの技術 を活用した物理学、化学を含めての統合的理科教育法を東南アジア諸国におい て普及させることを目標とする。

3. 成果物

 教育協力を実施する対象地域において教員、および学生が生体分子の機 能および生命現象を理解するために必要な物理学、化学の基礎知識をどの程度 持っているかに関する分析結果を基にして、生命現象の理解に必要となる重点 項目を選別し、高校生、大学教養課程の学生、高校教員を対象とした統合的理 科教育プログラムを作成する。さらにタンパク質合成系を活用した教材の内容 について、生命現象を体感できるよう、合成させるタンパク質の種類の検討、 観察する事項の選別、教材マニュアルの作成などを行い、学習キットとしての 最適化を図る。

 最終成果物:(1)学習指導内容概要、(2)タンパク質合成学習キット、(3)国外における実施報告書

4. 国内報告会資料

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