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派遣現職教員の活動の幅を広げるハンズオン素材とその活動展開モデルの開発

鳴門教育大学
服部 勝憲

1. 概要

 派遣現職教員は任国において,各教科等の指導はもとより,クラブ活動, 同好会,レクレーション,文化祭等々の多様な活動(以下「多様な活動」)に参 加,或いはそれをコーディネートしている。そうした多様な活動の中で,子ど も達や地域の人達が積極的に取り組んでいると報告されているものに,折り紙 やパズル,数学的なゲーム,地域の材料を用いた簡単な科学実験などの素材 (以下「ハンズオン素材」)による活動がある。

 そこで,本活動では派遣現職教員、我が国学校教員、教育研究機関等で 開発・活用されたハンズオン素材の共有を図るとともに,大学の持つ知と経験 との連動によるその評価,及び改善・再開発をねらいとする。多くの派遣現職 教員は,開発途上国の環境において現地の材料を用いて廉価で作成できるハン ズオン素材のノウハウと実践事例を持っており,その一部は拠点システムアーカイブ スに登録されている。しかし,多様な活動に活かせるハンズオン素材や実 践事例は質・量ともに必ずしも十分ではなく,その活用を支える活動展開モデ ルの開発にも到っていない。そこで,協力隊員によるハンズオン素材の共有・ 活用をさらに推し進めると同時に,関心・意欲,表現力,創造性育成等の観点 から素材に検討・評価を加えることで,子ども達が積極的に取り組む活動展開 の実現を支えるハンズオン素材の再開発を図り,他の現職隊員が利用する際の 汎用性・信頼性を高めていく。また同時に,現地で入手可能な材料の違いなど を踏まえたアレンジや活動方法についての情報交換を進め,青年海外協力隊(JOCV) 事務局や青年海外協力協会(JOCA)と の連携のもとハンズオン素材を活用した多様な活動の展開モデルを開発する。

2. 目標

 本活動の目標は,以下2点である。第1に,派遣現職教員等により開発・ 活用されたハンズオン素材を収集し,それぞれを活動の目標(ゲーム,算数数 学教材,理科教材など),内容 (数の性質,図形の性質,質量保存などの対象 概念)、方法等(教員のデモ、学習者の操作等)に基づき分類した上で,関心・ 意欲,表現力,創造性育成等の観点から評価・再開発した上で共有を進めるこ とで,開発途上国での派遣現職教員の活動を支援することである。第2に,こ れまでの我が国における様々な経験の中で開発・活用されてきたハンズオン素 材を紹介したり,素材開発のアイデアを提供したりすることを通して,派遣現 職教員が任国でそれらを活用できるよう協力することである。こうした活動事 例の収集・精査を通してハンズオン素材を活用した活動展開モデルを開発し, より質の高い活動実践を支えることである。 具体的な目標は次の通りである。

  • 東南アジア アフリカ 及び大洋州 などに派遣中の現職教員の多様な活動やハンズオン素材を調査し,途上国 で実際に必要とされる活動素材に関するニーズ調査を行うとともに,ハンズオ ン素材開発に対する協力依頼を行う。
  • 筑波大学教育開発国際協 力研究センター(CRICED)が運営する派遣隊員メーリングリストを活用し, ハンズオン素材の評価・再開発に向けた組織体制を築く。派遣中の隊員に限ら ず,帰国後の隊員にも適宜協力を要請する。
  • 開発されたハンズオン素材に対し活動の目標,内容、方法等に基づき分類 した上で,関心・意欲,表現力,創造性育成等の観点から検討を加え,再開発 を行うとともに,活動事例・活動展開モデルの開発へとつなげる。
  • 再開発したハンズオン素材及び活動展開モデルを,今後派遣される現職教 員がより的確かつ容易に活用しえる形で拠点システムアーカイブ ス登録を進める。
  • 特に現地での実践については,JICAとの協議の上で,その成果が途上国 での多様な活動に携わる関係者に広く周知されるように,実践事例集の形で集 約する。このとき派遣現職教員と現地教員等との協力による活用のために、そ のねらいや活用方法等については和文だけでなく、英文の要約を付ける。

3. 成果物

  • 開発途上国支援のためのハンズオン素材開発評価研究会(人的ネットワーク)
  • 開発途上国におけるハンズオン素材ニーズ調査報告書
  • 収集・開発したハンズオン素材とそれらを活用した活動展開モデル及び実践事例集
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