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日本の地方組織による就学奨励グッドプラクティス(GP)の調査と開発途上国への適用性検証

九州大学

1 概要

1990年のジョムティエン会議以降、「万人のための教育」(EFA)が国際目標となり、基礎教育の拡充が開発途上国の優先課題となっている。近年のモニタリング評価によれば、学校建設などのインフラ整備が進む一方で、中途退学や未就学者が未だに多いことが指摘されている。これは、途上国中央政府の主導によるEFA実現に困難があることを示唆している。地域社会の現実やニーズにそぐわない、または理解しない教育政策は自ずとその実現に限界がある。現在、多くの途上国が地方分権を進めており、地方レベルでのイニシアティブ・創意工夫がなお一層期待されている。
 日本では、近代化の過程において比較的短期間のうちに高い初等教育就学率を達成したが、地方では就学奨励においていかなる試みがあったのか?上記の途上国の課題を鑑みて、日本の地方における就学奨励策についての経験を整理し、その教訓を文化的・社会的背景の差異に配慮しつつ途上国に向けて発信する意義は十分にあると考えられる。本活動においては、初中等・成人教育に関わる就学奨励GPを網羅的に収集し、その中から途上国に適用性があると思われるものを10モデル程度ピックアップし提示する。
 検証方法については、就学率向上が課題となっている南アジア(パキスタン)およびアフリカ(ガーナ)においてGPを紹介の上、幾つかのGPを試行してもらう。現地のNGO(パキスタン:SABAWAN)および大学(ガーナ:ケープコースト大学)にモニタリングを依頼し、その経緯を報告してもらう。また、活動実施者数名が現地を訪れ試行状況を確認する。

2 目標

日本の近代化過程での基礎教育(初中等教育)拡充・就学率向上における地方組織(地方自治体等)の創意工夫、特色ある施策(グッドプラクティス)をレビューし、開発途上国への適用性のあるものを抽出・発信する。「万人のための教育」実現を課題とする開発途上国の政府や自治体、市民団体、および開発援助関係者に参考としてもらう。

3 成果物


1.ハンドブック「日本の地方における就学奨励GPと途上国への適用性」(日本語版および英語版)
2.活動報告書
:ハンドブックは、途上国教育関係者(政策立案者、行政官、学校経営者、教員、市民団体、コミュニティ等)にとっては、教育を重視してきたとされる日本の先行経験を学び参考とするリソースとして、また、開発援助関係者(JICA(ジャイカ)、NGO、コンサルタント、研究者、国際機関等)にとっては、政策助言やEFA支援プロジェクトの立案の際に参考とする資料として、利用してもらう。
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