---

産学連携による開発途上国の大学工学部の機能強化(第3年度)

豊橋技術科学大学

1 概要

 本事業は、開発途上国の大学における工学系の活動に産学連携を組織的な活動として組み入れることにより、産業界の競争力向上と大学の教育研究機能の強化を図るため、スリランカ国モロツワ大学をモデル大学として、産学連携の開発モデルを構築することを目的としている。

本事業は平成1919年度に発足し、初年度には本学の産学連携の体制と取り組みに対する理解の促進とモデル大学において取り組むべき課題の整理がなされ、第22年度においてはモデル大学にのおける産学連携のための企業ニーズと大学シーズの調査、同大学における体制整備、産学連携に係るガイドライン案の起草がなされてきた。

これを受け、事業期間の最終年度となる平成2121年度においては、産学連携の推進に際して求められる活動をモデル大学における経済的産業的文脈の中で明らかにするとともに、本学の経験や他のアジア諸国の現実にも照らし、モデル大学を越えてより幅広い開発途上諸国の諸大学において活用可能な産学連携推進のためのガイドラインを策定し、関係大学及び産業界の利用に供しようとするものである。

2 目標

本事業(第3年度)は、これまでモデル(スリランカ・モロツワ)大学で実施してきた学内の産学連携体制の整備を強化するとともに、持続的な産学連携活動が自立発展するための研究資金循環システムの確立を目指す。スリランカでのこれらの成果に基づいて、他の開発途上国の大学においても広く利用可能な汎用性の高い産学連携促進のためのガイドラインを策定する。

【モロツワ大学における産学連携体制】

目標

過去2年間に亘り実施してきた活動を総括し、モロツワ大学での産学連携体制の整備を補遺して、その完成度を高める。

期間

平成21年7月〜平成22年2月

実施

モロツワ大学EDC (Engineering Design Center) メンバーが主体となり、必要に応じて本学が支援する。

活動

  1. 大学によるIP (Intellectual Property) ポリシーの最終承認と確定
  2. ニーズ調査手法の開発と展開
  3. 共同研究契約書フォーマットの策定
  4. 研究基金設立に向けた諸規定・規則の整備
  5. その他

【研究基金制度】

目標

持続的な産学連携活動が自立発展するための研究資金循環システムを構築するために、研究基金制度の立ち上げを検討する。この制度においては、企業は共同研究経費を研究開始時に用意するのではなく、研究成果が出た段階で利用価値に応じた価格で成果を買い取ることとし、売却益が研究基金となりプールされ新たな共同研究実施のための費用に充当されることを構想する。このようにして、産学連携共同研究を実施する上での企業側の研究開発投資リスクを最小限に抑え、企業の共同研究実施の積極的な参加を促す。

期間

平成21年7月〜平成22年2月

実施

モロツワ大学EDCが主体となり、必要に応じで本学が研究支援を行う。

活動

  1. 初期研究資金の調達可能性検討(スリランカNSF [National Science Foundation]、政府、大学)
  2. 研究成果売却のための諸規則の整備
  3. 研究成果の価値評価方法の開発
  4. 上記を含めた共同研究契約書フォーマットの策定
  5. その他

【産学連携促進のためのガイドライン】

目標

モロツワ大学で実施してきた活動を整理・分析し、モロツワ大学での初期条件・環境および境界条件を明らかにする。スリランカの産業構造、政府の政策と産業界の動きについても分析を行い、他の開発途上国の工学系大学・学部において、また、工学部以外の学部においても、産学連携推進の参考になるような汎用性のあるガイドラインの策定を目指す。

期間

平成21年9月〜平成22年3月

実施

本学実施メンバーが主体となり、適宜モロツワ大学の本事業実施メンバーの支援、並びに他の途上国の大学教員(例えば、インドネシア・バンドン工科大学)の協力を得る。

活動

  1. スリランカ国の産業構造と産業育成・強化政策の分析
  2. モロツワ大学の組織と意思決定メカニズムの調査
  3. モロツワ大学における産学連携体制 (事業実施前と後の比較) 調査
  4. モロツワ大学の研究能力と研究設備の評価
  5. モロツワ大学による産業界のニーズ調査と産業界の意識変化把握
  6. その他

3 成果物

  • 産学連携推進のためのガイドライン(和文版)
  • 産学連携推進のためのガイドライン(英文版)
  • 産学連携による開発途上国の大学工学部の機能強化イニシアティブ(平成19〜21年度)総括報告書
---