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アジアにおけるESD国際協力カリキュラムの開発−高等学校を中心にして−

大阪大学

1 概要

(活動要旨)

ESD(Education for Sustainable Development)で扱うべき内容は、人権・平和・自然環境・貧困・健康・多文化・教育・情報などの多岐にわたる。現代の社会を、持続可能な社会へと転換することを目指して、ESDをどのように進めるか、あるいはその目標や方法をどのように設定するかは、それぞれの国や地域の実情に応じて大きく異なっている。そこで、本事業活動は、各国の事情を踏まえながら、アジア各国でESDの共通目標とプロセスを共有することで、アジア地域としての共通の ESDの取組みの可能性を目指すものである。

本事業は、大学での豊富な途上国支援の研究成果と、大阪の高校が進めてきたUNESCO ASPnet(Associated Schools Project network)での多国間協同実践の成果に基づき、アジア地域の高等学校でESDの国際カリキュラムモデルを多国間の参加と協同作業によって開発する。これにより持続可能な社会に向けて求められる能力・知識・意欲・態度・価値を、アジア各国の高等学校が共有し、実践することを目指す。参加する国は、 UNESCO ASPnet に積極的に参加しているタイ、フィリピン、中国、韓国の各高校であり、今年度は日本の3校とアジア4カ国から1校ずつ、計7校が参加する。

なお、今後Asia ASPnetを始めとする多くの学校でこの国際カリキュラムモデルを用い協同実践を発展させる予定である。

(特 徴)

本事業における国際カリキュラムのモデル開発の特徴は、日本を含めたアジア各国の異なる地域・学校の教員・生徒が参加型手法により共同かつ創造的にESD の国際カリキュラム構築を行う点にあり、日本で策定したESDのカリキュラムをそれぞれの国で実施する輸出型カリキュラムとは異なる。参加型手法を採用することにより、対等な立場で諸地域の教育・社会における「持続性をもたらす要因・現象」等を相互に理解しながら実践可能なカリキュラムづくりを行うことができる。それは、開発されるカリキュラムもさることながら、その開発の過程そのものが、ESDの目指す、特定の社会に暮らす人にのみに未来が開かれているのではなく、誰もが対等であることを明らかにするものである。したがって現段階ではカリキュラムの内容については未定である。

(実施)

第1ステージ:国際カリキュラム作成のためのフレームワークづくり

最初に、大阪大学(中村安秀、前迫孝憲)・お茶の水女子大学(内海成治)が有する途上国支援の豊かな研究成果と、UNESCO ASPnetに加盟し、協同実践を重ねてきた大阪の3つの高等学校(大阪教育大学附属高等学校池田校舎・大阪府立北淀高等学校・羽衣学園高等学校)の経験を合わせて、ESDの国際カリキュラムを開発するための多国間フレームワークを形成する。具体的に、ESDで扱うべき人権・平和・自然環境・貧困・健康・多文化・情報などの多岐にわたる諸課題を、生徒の身近に起こっている課題や問題と結びつけ、5カ国の生徒が共通して学習すべき課題・問題を抽出して国際カリキュラムとして構成するための枠組みを明確にする。

第2ステージ:国際カリキュラム試行版の協同開発

アジアの各国高校教員がワークショップを行い、先のフレームワークをもとに試行のためのカリキュラム原型を作成する。したがって、現段階(申請段階)ではカリキュラムテーマおよび内容は決めることはできないが、国際カリキュラムに相応しく開発プロセスそのものに関係国教員が参画する形態で行われる。この第2ステージでの実践活動は国際的な参加型カリキュラム開発のプロセスの研究過程でもある。

協同開発されるカリキュラムは、〔槁検蔽亮院Φ伺宗β崚戞法↓内容項目、指導法(学習法)からなる。とりわけ指導法はESDの理念、及び多国間での汎用性などの観点から「羅生門的アプローチ」や「工学的アプローチ」*などを検討しながら進める。この段階において大学と各国高校教員の連携により国際カリキュラムテーマと内容の原型が創られる。(*前者は、授業の一般目標を重視したカリキュラム、後者は行動目標を重視したカリキュラム。)

ただし、本年度は「組織化・策定・調査・実施・検証・評価」を単年度で実施する必要性から、国際カリキュラム試行版を開発する。試行版は、6回〜8回(6時限〜8時限)分のカリキュラムとして開発することを考えている。この時間配分は高等学校における各教科の単元構成と比べて同等の学習展開が可能だからである。

第3ステージ:国際カリキュラム試行前の事前調査の実施

開発する国際カリキュラムの効果を明確に把握するために、カリキュラムの実施前の生徒の授業テーマに関する知識・態度・価値などを事前に調査する。この調査は各国において中心的な設問(コア)を共通にしたものとし、各国間での比較・分析が可能なものとする。

第4ステージ:国際カリキュラム試行版の実践

2009年11月〜2010年1月末までの間、各国の実情に合わせた適切な時期に参加高校において、協同開発された国際カリキュラムを試行する。

第5ステージ:国際カリキュラム試行版の検証

2010年2月ごろ、開発した国際カリキュラム試行版の実践成果を検証する。とりわけ生徒の社会の持続可能性に関する能力に着目する。これは数値の検証ではなく、具体的な能力について生徒間のディスカッションや相互検証を行って確認する。また教師どうしのワークショップによって、このカリキュラムの課題を明確にする。こうした学びの場を総合して、次年度のカリキュラム改訂を行う。

2 目標

2009年度はアジア5か国の高校教員・生徒による参加型協同実践により、国際カリキュラム試行版を開発する。

持続可能性を深める共通実践目標とプロセス・成果を参加各国・各校間で共有し、国際カリキュラムを各国で試行する。

3 成果物

  • 国際カリキュラム試行版
    この国際カリキュラム試行版にはESDの理念およびカリキュラム作成の意図と狙いを含み、授業主題、授業単元毎の内容と意図・ねらい、用いた教材と指導法、および検証方法が含まれる。
    なお、この国際カリキュラム試行版は各国の言語で作成され、およそ6時限から8時限で実施出来るものである。また、今後Asia ASPnet参加国での共通のESDの取組みとして発展的に利用される。
  • 国際カリキュラム試行版開発過程および実践記録ビデオ
    記録ビデオは、国際カリキュラム試行版がどのような過程を経て開発され、具体的にどのような実践であるかを明らかにする。これにより、新たに国際カリキュラムを導入する国や学校の参加を容易にし、アジア地域としての共通のESDの取組みを広げることにつなげる。
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