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ベトナムの拠点大学における「災害看護学」教育導入の支援

日本赤十字九州国際看護大学

1 概要

本計画は、近隣の災害多発国、特に、我が国との関係の深いインドシナ半島諸国(ベトナム、ラオス、カンボジア)など、アジアの開発途上国の拠点大学/学校に対し、災害看護学の教育導入と、継続的拡大的実践のための体制づくりの支援を行うものである。本学は、これまで平成16(2004)年に津波災害後のインドネシア・バンダアチェで日本赤十字社の復興支援の一環として、また平成21年度にベトナム国で文部科学省国際協力イニシアティブ事業として、災害看護教育導入を支援した経験を持つ。本計画では、特にベトナムの経験を発展させ、同国の特性に鑑みた災害看護学教育の理念構築を支援し、具体的なカリキュラム・教材の開発とシラバス作成を含む教授法の確立を支援し、さらに、作成した資材が現地で実用されるとともに、本イニシアティブによる災害看護教育が、現地人材によって継続発展できるようになることを目指す。

本計画は、平成21年度に着手したベトナムにおける災害看護学教育を強化発展させる。平成22年度には、昨21年度の成果に基づき以下の活動を行う。平成 21年度の交流活動や現地セミナー/ワークショップに参加した現地教員と本学教員間に構築されたネットワークを基盤として

  
災害看護学の実践と応用を強化する。即ち、災害時に最もリスクの高い高齢者、妊産婦、乳幼児、障害者、また、慢性疾患患者などへの対応を、昨年同様、現地ワークショップ方式でモデル教育を行う機会をもち、ベトナム人教員の知識と技術を拡充する。ワークショップ実践の模様を撮影した資料、使用した教材などは、次の△よびの材料として用いる。
ベトナム人教員による災害看護学の総合的教科書作成を支援する。ベトナムの災害看護学発展の目下の中心的課題は、ベトナムでの災害の概要を集約し、これまでに同国教員が昨年度本イニシアティブによって得た知識をもとに作成しつつある災害看護学のコア部分を検証し、上記応用編の知識・技術ならびに資料を加え、ベトナム国に相応しく、各地の教育現場で用いられる統合的教科書を作成することである。本教科書は、ベトナムでの汎用性を獲得するよう、ベトナム側教員の経験や認識や創意を十分に生かしつつ、国際水準を満たす内容とし、主たる使用言語はベトナム語とする。平成22年度イニシアティブの間には、根本的な災害看護学のコア部分(基礎編)を、日本語、英語、ベトナム語で作成する、これは、以後、漸次、有用な写真、図表、事例等を加えて応用編を作成する土台となるべきものである。
あわせて、本年度イニシアティブの間にを看護大学における授業法(概説)を作成する。、看護や医学の教育では、実践性を重んじることが何にもまして必要であるが、そのため、経験的言説の伝達が教育活動の中心となって事足れりとされ、大学教育にあるべき普遍的原則や方針の抽出へのモーメントが弱くなりがちである。ベトナムでは、大学レベルの看護教育はまだ緒に就いたばかりであり、わが国で確立しつつある大学看護教育、特に、本学が行っているLiberal artsと保健/看護系の教育とを統合した論理的教育法の概要を提示する参考書を作成する。
そのため、教授内容と方法論の考案と吟味も必要となるを行う。具体的には、これまで本学が作成して使用しているカリキュラムや教材や昨年度のワークショップをきっかけにベトナム人教員によって作成されつつあるシラバス・カリキュラム案などを再度吟味し、応用編ワークショップから得られる資料を教材化して加えるという過程と、現地の条件に対応するために追加すべき情報やそれぞれの教育対象者に対して最大の効果をあげるために考慮すべき教授条件と教授法など、教育方法を考案する過程を、本学看護・保健系教員と外国語教育学を専門とする教員が協力して支援し、ベトナムの多様な現場での教育と看護実践の拠り所とすることのできる教科書と事例集の作成の完成とその使用を目指す。
教科書作成へのベトナム側の関与を鑑み、本年前半には、現地で、ベトナム人教員によるワークショップやパイロット授業も試行してもらい、その経過と問題点をメイルなどで検討しあい、年度後半に日本側が現地入りすることを現地側と折衝する。
これらを踏まえて、本イニシアティブに参加していないベトナムの他地域の教育機関や、医療施設などへの災害看護学導入のためのガイドライン作成過程を支援する。なお、日本側は、基礎的災害看護教育活動ガイドライン案を作成し、現地の意見を取り入れて修正・加筆による充実発展ができる基盤づくりを行う。
上の経過を通じ、ベトナム保健省や教育省、または看護協会など関係省庁や機関に対する災害看護学導入の体制作りの必要性を訴える提言書を、ベトナム側と共に作成する。昨年来の活動によって強い協力関係が築かれているモデル校ナムディン大学学長をはじめ、中核的教員と緊密な検討を行って、提言書をまとめる。

以上の活動によって期待される具体的成果物は、〆匈牡埜邀悗良疂彭総括的教科書作成、∈匈牡埜郤汰のためのガイドライン作成、 事例集、ご埜鄲膤悗砲ける教授法概説(案)の4種である。
その他、保健省および教育省への提言書、ワークショップの報告書、ベトナム人による教育実践の報告書、などは事業報告として付する予定である。

上記4種の成果物は、今後の国際支援活動・国際協力活動に有用な示唆を与える成果物となることが期待できる。さらに、直接は見えないが最大の成果として期待されるのは、既に始まっている昨年度ワークショップ参加ベトナム人教員たちによる、わが国のイニシアティブで始まった災害看護の波及と、世界でも先進的であるわが国の本分野を通じた、保健医療人材間の強い連携がある。この分野をアジア諸国に普及推進する主導的人材として、本学は既に多様な経験を獲得しているが、さらに本学教員が文化の異なる地域の人々への知識・技術供与のノウハウと経験を充実させ、それを日常の学部・大学院教育に裨益することは、本学とベトナムの大学、大学教員間の関係が一層密になるだけでなく、次世代のグローバルな貢献にも資すると期待される。

本学は、既に韓国、タイの各2看護大学と国際交流協定をもっているが、この輪にベトナムを加え、相手先の状況が許せば、本イニシアティブの稼働中の本年度のしかるべき時期に、ベトナム初の国立看護大学であるナムディン看護大学と公的交流を締結し、日・韓・タイ・ベトナムのネットワークを構築したい。

本ネットワークを基に、将来のアジア災害看護ネットワーク形成と目指し、本活動から得られる経験を、本学を通じて、広くアジアの教職員に発信し、さらに毎年、学生現地教育を通じた若者の国際関係能力の向上、看護学研究の推進へとつなぎ、看護教育・看護研究のコンソーシアムへと発展させていくことも射程に入れたい。

2 目標

災害看護学の応用編(高リスク対象者向けの災害看護学)についてのワークショップを開催する。
ベトナム人対象の汎用性のある 総合的災害看護学の教科書を作成する。 内容は別記したが、本教科書は、平成21年度国際イニシアティブに関与した8施設はもとより、これらを通じて、その関係保健医療施設への周知配布のほか、関係者の関与する学会や職能団体を通じて周知配布する。
ベトナム人教員が中心となってワークショップ・パイロット授業を行い、その結果に基づいて災害看護学普及のためのガイドラインを作成する。
事例集を作成する。災害看護研修では、しばしばシミュレーション手法を用いるが、ワークショップなどで用いた事例をまとめ、将来の研修の際に資する事例集を作成する。
看護大学における教授法概説を作成する。前述したが、ベトナムの状況を踏まえた看護大学教育の基礎を示す指針である。
ベトナム保健省、教育省および実践の場である病院など保健医療施設や、看護協会など職能団体など関係省庁に対する提言をまとめる。

3 成果物

  1. ベトナム人対象の汎用性のある総合的災害看護学の教科書(本教科書は、イニシアティブに関与している8看護教育施設での使用はもとより、当施設らが関与する保健医療機関や関連職能弾劾また学会を通じて周知広報するよう要請する。)
  2. 事例集(講義、ワークショップの副産物として、こられで用いた事例をまとめ、特に実践の場での訓練に有用な事例集を作成する。教科書の補完として、研修時の具体的な注意事項などを記載する)
  3. 災害看護学普及のためのガイドライン(災害看護学とその実践の重要性を周知広報するための資料)
  4. 看護大学における教授法の指針(Liberal arts系基礎学問と看護理論および実践を統合し、シラバス作成を含めた教育法の指針)
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