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学校保健分野における国際協力モデルの構築と自立支援

大妻女子大学
大澤 清二

1. 概要

  • ミャンマー  ミャンマーにおける事業開始の当初は(平成17年)、ミャンマー政府の許可を得ること自体が大きな関門であったが、3年間の学校保健改善事業を展開し、現在は順調に活動できる段階になってきた。ミャンマー政府は好意的に本事業を理解し、本省計画訓練局内に学校保健改善協力チームを設けるほか全国8,000人の教員養成大学学生と同国内の小中学校12,000校に本事業のマニュアルを配布することに協力するほか学校保健通信の発行を共同で実施している。平成22年度は同教育省とも協議し以下の計画を立案した。
    1. 教員養成大学20校および教育大学3校のうち5校(残る5校は平成23年度)の学長を含む教員を対象として学校保健改善のためのWSを実施する。(既に21年度に13校を実施)
    2. 昨年と同様に、WSの後にこれらの教育系大学においては、学生に対してWSにて研修を受けた教員が学校保健改善プログラムに関する授業と指導を行い、同大学のすべての学生に対して本事業のマニュアルを利用してモデルの普及を図る。
    3. 現在までにモデル校として改善活動を実施してきた学校の活動をさらに持続させるとともに、その活動状況をWSはじめ各地で報告してもらう。また、教育省の学校保健協力チームスタッフが適宜この活動を評価点検して確実な定着と普及を図る。
    4. これらモデル校は上記の教育系大学と協力して学校保健改善のためのチームを編成し、相互の情報、人材の交流を行って、これら地域の学校保健改善活動を推進するように計画する。この活動も本省の学校保健協力チームが適宜後方支援するとともにミャンマー政府が実施する学校点検評価制度にこの事業が行っている学校保健の項目を組み入れて実施する。
    5. (ミャンマー政府の希望する)ミャンマー学校保健法の草案作成を支援する為に同法の英訳を開始する。
  • タイ
    1. タイにおいては従来と同じく辺境の学校で活動を行う為に平成21年度に試みた拠点寺院における指導教員を対象としてWSを継続して実施し、更に寺院における一般僧に対する教育指導に当たってもらう。
    2. 衛生状況が劣悪で児童の健康状態が著しく悪い山地民の学校に対して、モデル校の教員によって学校保健改善チームを組織して、HQCによる改善活動を引き続き行う。
  • ネパール
    1. 本事業を開始するに当たってカトマンドゥ大学においてネパール語版マニュアルを用いたWSを実施するとともに現地における学校保健状況を評価するために情報収集を行う。
    2. ミャンマー、タイで実施したプログラムのうちネパールで実施を急がれるものを現地側と協議して選択し、具体的な支援プログラムを提案する。

2. 目標

  • ミャンマーにおいて
    1. 教育省計画訓練局、第1、2、3管区と各タウンシップオフィス、小中学校、教員養成大学および教育大学が連携して持続的で対費用効果の高い学校保健改善モデルを構築する。
    2. 校長、教員が主体となって費用をかけずに、自主的にPDCAサイクルをまわすことができる(学校保健改善計画を立案し、改善し、評価できる)モデルを構築する。
    3. HQC(QC手法による学校保健)活動を展開して保健室活動、生活習慣、学校環境衛生、学校安全、栄養や学校給食などの改善を具体的に推進する。
    4. 大学教員から学生(未来の教員)への教育指導を行い、中長期的な学校保健開発のための人材養成モデルを開発する。
    5. 学校点検評価制度に学校保健関連項目を加えたマニュアルを普及する。
    6. 学校保健法の草案作成を支援する。
    7. 昨年度完成した発育栄養標準を用いた栄養指導を開始する。
  • タイにおいて
    1. 辺境地域において、同地域のモデル校の教員、社会教育関係機関・組織、NGOと協働して学校保健改善チームを運営し、改善活動を持続する。
    2. 北タイにおいて大学でもある拠点寺院における教育指導プログラムに本事業を定着させ、山地民の教育の拠点として本事業の普及を図る。
    3. 昨年度完成した山地民ごとの発育栄養標準を用いた栄養指導を開始する。
  • ネパールにおいては
    1. 作成したネパール語版マニュアルを用いたWSを行い、この事業のネパールにおける展開を開始する。
    2. ネパールにおいて優先するべき支援プログラムを提案する。

3. 成果物

  • 平成22年度事業報告書(電子版、現地活動報告を含む)
  • ミャンマー学校保健通信
  • 平成22年度実施報告ポスター(国内報告会用)
  • 学校保健法(英語訳)
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