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発展途上国の基礎教育開発における国際教育協力融合モデルの構築:
「万人のための教育」目標達成へ向けた能力開発

名古屋大学大学院国際開発研究科
廣里 恭史

1. 事業の目的

 国際社会は、2000年に掲げた貧困削減の「ミレニアム開発目標」の達成度評価や基礎教育開発を中心とした「万人のための教育(Education for All: EFA)」目標達成戦略の見直しを行っている。また、近年の基礎教育開発は地方分権化の文脈で実施されており、途上国の主体性と援助協調に基づく教育「セクター・プログラム支援」形態が主流となっている。基礎教育分野を中心としたEFA目標達成は、地方における教育行財政、教育計画、学校運営、教育の質改善、モニタリング・評価に関わる個人、組織、システムの能力開発の度合いに拠るところが大きい。日本は、経済社会発展の初期段階より基礎教育開発を重視し、今日の途上国が直面する政策課題に多くの知見と経験を有している。しかし、今日の途上国が置かれている状況は、日本が基礎教育開発を進めた時代背景や文脈とは異なるものであり、日本の知見・経験が必ずしも直接的に有用であるとは限らない。本事業の主な目的は、基礎教育開発における日本と途上国の知見・経験などを融合した国際教育協力モデルの構築、及びEFA目標達成に向けた能力開発方法論を検討することである。

2. 事業の実施方法・具体的な活動内容

 本事業は、名古屋大学大学院国際開発研究科及び教育発達科学研究科による活動実施主体(活動実施者7名)に加え、国内の他大学、国際協力機構・国際協力銀行などの援助実施機関、海外ネットワークからの活動協力者によって構成され、以下のような具体的活動を行った。

  1. 基礎教育開発における国際的動向の把握と主要援助機関とのネットワーク構築:文献レビューと国内調査及びアメリカ・欧州における主要援助機関(DFID、UNDP、UNESCO、UNICEF、USAID、Sida、世界銀行)での聞き取り調査の実施。
  2. 基礎教育における均等なアクセスの改善、効率・質・関連性の改善、マネジメントの改善、などの主要セクター開発課題及びEFA目標達成戦略見直しの方向性に沿った日本の基礎教育開発支援のプログラム化:カンボジア、ベトナム、ラオスなどを対象とした事例研究(バックグランド・ペーパーの作成と現地調査)の実施。
  3. 基礎教育開発における国際教育協力融合モデルの構築及び援助形態(有償・無償資金協力、技術協力)と援助スキームの連携による例示的な教育「セクター・プログラム支援」の構想:国内調査と中間報告会の実施及び国内報告会への参加。
  4. EFA目標達成のための能力開発方法論の検討。

3. 事業の成果

 本事業の成果は、以下の内容を盛り込んだ報告書としてまとめられる。

  1. 基礎教育開発に関する文献レビュー及び国際的動向。
  2. 日本の基礎教育開発支援のプログラム化に関する事例研究。
  3. 基礎教育開発における国際教育協力融合モデル及び援助形態・スキームの連携を視野に入れた例示的な教育「セクター・プログラム支援」の構想と提言。
  4. EFA目標達成のための能力開発方法論の検討。

4. コンテンツ作成ポリシー

  1. 途上国の基礎教育開発、特に「万人のための教育(EFA)」目標達成戦略に関する国際的動向を把握し、EFA目標達成支援に関するネットワーク形成を行う。
  2. 基礎教育開発の主要セクター開発課題及びEFA目標達成戦略に沿って日本と途上国の知見・経験の整理を試み、基礎教育開発支援のプログラム化を展望する。
  3. 基礎教育開発における「国際教育協力融合モデル」を構築し、国別の事例研究に基づく例示的な教育「セクター・プログラム」支援を構想する。
  4. EFA目標達成へ向けた能力開発方法論の検討し、実践的な能力開発モデュール作成に関する視点を提供する。
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