産学連携による開発途上国の大学工学部の機能強化
豊橋技術科学大学
本間 寛臣
1. 概要
開発途上国の工学系大学の教育・研究の向上、社会貢献の促進を図る手
段として、産学連携による工学部機能強化によるモデル
事業を、スリランカ
国モロツワ大学で実施する。初年度となる平成19年度は、モロツワ大学
における知的財産および技術経営の研修、日本での産学連携の実習研修を実施
し、自立発展的な開発途上国用産学連携モデルの構築に向け、モデルカリキュ
ラム、教材の整備を行うとともに、次年度以降の作業となる産学連携実施規則
整備、企業に対する技術相談や共同研究の受入れ体制確立等に向け、人材育成
を通しモロツワ大学のキャパシティービルディングを行う。また、モロツワ大
学での産学連携のパイロット研究を立ち上げ、実施する。
2. 目標
モデル校であるスリランカ
国モロツワ大学における、産学連携の強化による工学教育の向上を目的と
し、初年度としては、以下の開発途上国用産学連携のためのモデル研修を実施
することにより、日本における産学連携の取組みについてモロツワ大学関係者
の理解を深め、次年度以降、モロツワ大学が取り組む、産学連携実施規則整備
と運用、企業に対する技術相談や共同研究の受入れ体制確立等に向けた、アク
ションプランの策定を行う。
【スリランカ国内における研修】
- 目標:
- モロツワ大学教職員の知的財産および産学連携の基礎についての理解を
深め、産学連携センター運営に向けてキャパシティービルディングを行うと
ともに、知的財産および産学連携の基礎に関し、他の開発途上国での産学連
携についてモデルとなる研修方法を確立する。
- 期間:
- 1週間
- 対象者:
- モロツワ大学教員・職員約60名、ペラデニア大学教職員15名、ルフナ大
学教職員15名
- 講師:
- 加藤 浩/政策研究大学院大学 准教授(知的財産基礎講座担当)
佐藤 千惠/有限会社ビズテック 代表取締役社長(産学連携と技
術経営基礎講座担当)
- 内容:
-
- 知的財産基礎講座
日本の知的財産法、アジア諸国における知
的財産整備について講義するとともに、ワークショップ形式で知的財
産の活用事例を学ぶ。
- 産学連携と技術経営基礎講座
日本における産学連携の流れと
技術開発における技術経営と産学連携の重要性について講義するとと
もに、技術経営の事例についてワークショップ形式で学ぶ。
- その他:
- 加藤浩准教授、佐藤千惠代表取締役社長の2名は、モロツワ大学の経営
層との打ち合わせ、
スリ
ランカ国内の企業視察を行い、必要に応じ日本での実習研修の方法
について提案をまとめる。
【日本における実習研修】
- 目標:
- モロツワ大学で産学連携を担当する職員が、日本の産学連携コーディネー
タの役割についてOJTを通し理解を深めるとともに、他の開発途上国での産学
連携についてモデルとなる研修方法を確立する。
- 期間:
- 12日間
- 対象者:
- モロツワ大学教職員 計5名
- 講師:
- 柏原 英勝/元社団法人発明協会 統括特許流通アドバイザー、
現(株)千代田ユーテック 主任研究員
豊橋技術科学大学産学連携コー
ディネータ5名
豊橋技術科学大学未来ビークル
リサーチセンター教員5名
- 内容:
-
- モデル企業を用いたニーズ分析およびケーススタディに関し、演習
を行う。
- 自動車部品メーカーに対する企業ニーズ調査について、OJTで学ぶ。
- モデル企業を用いたニーズと大学のシーズのマッチングについての
事例を講義する。
- 自動車部品メーカーのニーズに対する解答作成プロセスをOJTで学
ぶ
- 以上の研修を踏まえ、次年度以降のモロツワ大学で取組みについて
アクションプランを作成する。
【産学連携によるパイロット共同研究の実施】
- 目標:
- 産学連携によるパイロット共同研究を実施することで、産学連携センター
において研究資金を継続的に循環させる仕組みを確立し、サステナビリ
ティーの確保されたモデルを確立する。
- 開始時期:
- 平成20年2月
- 内容:
- 研究の成果を企業に売却することを条件とし、モロツワ大学内で産学連
携のパイロット共同研究を公募し、選考した上で、同研究を開始する。
3. 成果物
- 自立発展的な開発途上国用産学連携モデルの構築に必要なモデルとなる
アクションプランが、モデル校であるモロツワ大学で策定される。
- スリランカでの産学連携にかかる企業ニーズについて調査が実施される
ことで、企業ニーズにかかる基礎的情報入手に必要な調査方法が確立され
る。
- モデル校であるモロツワ大学で「知的財産基礎講座」、「産学連携と技
術経営基礎講座」が実施されることで、知的財産および産学連携の基礎に
関し、他の開発途上国での産学連携についてモデルとなる研修方法が確立
する。
- 豊橋技術科学大学で「企業ニーズ実習研修」「ニーズ・シーズマッチン
グ研修」が実施されることで、他の開発途上国での産学連携についてモデ
ルとなる研修方法が確立される。
- 産学連携のパイロット研究が立ち上がり、実施することで、サステナビ
リティーの確保されたモデルが確立される。
- 一年次活動の総括として、研修マニュアル・研修教材・一年次事業実施
報告書が作成される。
4. 国内報告会資料