サブサハラアフリカの初等教育普及政策下における教育の質に関する比較分析
神戸大学
1. 概要
平成18年度から20年度の3年間、「国際協力イニシアティブ」教育協力拠点形成事業「サブサハラアフリカにおける初等教育普及政策および行財政制度に関する比較分析」を実施した。本事業は、その3年間の活動を踏まえ、前事業において分析できなかった教育の質について、深く分析を行うものである。
前事業においては、ケニア、ガーナ、マラウィ、ウガンダを事例国として、比較分析のフレームワークを形成し、教育行政や教育財政などの視点から現地調査を実施し、初等教育の無償化政策の現状を現地レベルで分析した上で、事例国の教育省関係者や援助機関の教育担当者を対象に現地でワークショップを開き、政策提言を行った。サハラ以南のアフリカの複数の国々では、初等教育の原則無償化を特徴とする政策(Universal Primary Education: UPE)が主流となっており、初等教育へのアクセスが向上しているが、その一方で、資格を有する教員や教室、教材の不足など貧しい教育環境により、生徒の学力が十分に身についていない、という問題点が途上国政府や援助機関の大きな政策課題となっている。 教育の質を向上することなしには、残存率や留年率などの教育の内部効率性を向上することもできない。更に、ミレニアム開発目標の指標で小学校5年間の就学が強調されているが、5年間の教育を受けても読み書きができない生徒が多くいることも問題視されている。
本事業では、学校レベルに焦点を当てて、教育の質の問題について具体的な検証や分析をしている研究論文や政策報告書が少ない現状を踏まえ、教育の質の問題についての比較分析のフレームワークを形成し、過去3年間で事例国としたケニア、ガーナ、マラウィ、ウガンダを再度事例対象国として、アフリカの研究者と共に調査研究を遂行する。また、研究成果が事例国における教育政策に組み込まれるよう政策提言を行うために、これまで築き上げてきた現地でのネットワークを大いに活用し、調査実施前から教育省の政策提言者に対し本研究をブリーフィングする。前事業においてこれまで構築してきた現地でのネットワークを大いに活用して研究を遂行できることは大きな利点であり、本事業の特徴でもある。
2. 目標
- サブサハラアフリカ地域における初等教育普及(UPE)政策における質の分析についての共通の政策分析フレームワークを構築する。
- 現地調査を実施して、教育の質の問題点について分析する。
- 同地域におけるUPE政策下の教育の質に関する共通問題および各国に特有の問題を把握する。
- 本年度の成果を報告書としてまとめる。
3. 成果物
- 比較教育政策分析フレームワーク
- 現地調査の結果を踏まえた報告書