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海外教育協力者に対する教育実践指導と教育マテリアルの支援

宮城教育大学

1 概要

宮城教育大学は、環境教育分野の教材や教育手法を活用して、青年海外協力隊派遣現職教員に対するサポートを進めている。これまで、環境教育実践事例データベース、青年海外協力隊活動データベース、教材資料集(紙芝居教材、素材パーツ集、環境教育用語集等)、協力隊活動の阻害・貢献要因シミュレーション教材とそのデータベースを協力隊員へ提供した。

本来、環境教育分野における教材は、教科横断的で人の暮らしに密接した課題を多く扱うことから、隊員の職種を限定することなく、多くの隊員の基礎的および発展的活動に役立てられる。特に、青年海外協力隊活動データベースと阻害・貢献要因シミュレーション教材は、全ての協力隊員の日常の教育業務の計画とその推進に役立つものである。私たちは、環境教育分野の枠組みの中で教材支援を進めてきたが、新たな視点として、これまでに蓄積した教育資源を活用しつつ、学校教育の障害となる教育課題(分野を特定しない)の解決・改善に寄与する教材を作成すれば、より効果的な支援が可能となると考えている。

そこで、今年度の事業では、1.これまで進めている環境教育分野の教材支援を継続することに加えて、2.これまでに蓄積した教育資源を活用して、協力隊員の日常的な教育課題を解決するための教材(教科横断型の教材:紙芝居教材、課題解決型のクリップアート集)を作成し提供する。教材作成に際しては、課題の分析に派遣中隊員からの情報収集と、小学校教諭の活動事例(教育の最も基礎的で多様な事例)を参照する。作成した教材は、職種を限定することなく、多くの隊員へ提供される。

支援区分としては、派遣前隊員、派遣中隊員、および帰国隊員に対する教育支援を実施する。特に、派遣前隊員支援では、阻害・貢献要因シミュレーション教材に焦点を絞る。隊員活動報告から多数の阻害要素と貢献要素を取り出し、隊員の課題解決能力を高める教材を提供する。派遣中隊員支援では、環境紙芝居をベースに、学校教育と住民教育(啓発的取り組みを含む)の教育課題に役立つ教材を組み立て提供する。さらに、帰国隊員支援では、教育委員会と共同で海外教育経験の還元法について検討(学校の教育研究会等で具体化)を進め、海外教育経験の活用モデルを作ることを目標とする。

2 目標

(1) 教科横断型教材の作成と配信
派遣現職教員の教育活動上の課題(小学校教諭を選ぶ)を分析し、蓄積している環境教育教材をもとに、教育課題解決のための教材(紙芝居教材、クリップアート集、データベース)を作成する。年度末までに協力隊員へ教材の配信を行う。
(2) 阻害・貢献要因シミュレーション教材の作成
これまで、アジア地域に派遣された隊員活動の分析を進めてきたが、さらに中南米カリブ地域、大洋州、アフリカ、中近東地域のJOCV活動報告書(環境教育)について、活動上の阻害・貢献要因を分析し、既存のシミュレーション教材に追加する。この教材をJOCV協力活動手法研修(JICA派遣前研修)において活用すると共に、シミュレーションデータベースとして隊員へ配信する。
(3) 海外教育経験の活用モデルの作成
これまで2度にわたって実施した国際協力イニシアティブセミナーでの検討結果をもとに、仙台市教育委員会と共同(JICA東北の協力)で、派遣現職教員の海外教育経験の活用に関する検討を進め、学校の教育研究会(教科研修、教科外研修)における検討を経て、海外教育経験の活用モデル(学校の授業計画への導入等)をつくる。年度末頃を目標に、国際協力イニシアティブセミナーを仙台で開催し、それまでの検討結果を総括、および次年度以降の取り組みについて提案する。

3 成果物

(1) 派遣現職教員用実践教材(紙芝居とクリップアート)(仮称)(冊子とDVD/CD)
(2) 青年海外協力隊活動阻害・貢献要因シミュレーション教材(仮称) (教材の実物とデータベース)
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