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動物園を活用したマダガスカルのESDパイロットマテリアルの構築

宮城教育大学

1 概要

マダガスカル(以下マ国)ではMDGs達成に向けて基礎教育の質の向上のための教育改革が進行している。初等教育の目標とする子ども像は、「基礎的知識技能を各教科分野で得て活用できる」「創造力,イニシアティブ,チーム精神を発揮して与えられた仕事を遂行できる」「マダガスカルの財産に対して、公共文化的価値観と誇りを抱く」「他者との調和」「未来に確固として向き合い,変化に積極的に関わりつつ適応できる」「地域・国を理解し,文化・社会的活動に参加する」であり、中等教育においては「社会における有用な人材の育成」が目標となっていることから、ESDの導入はマ国の教育改革の重要な鍵であるといえる。改革の一環として教員養成課程の構造も大きく変わりつつあるが、対応する教育カリキュラムの編成は遅れており、普及すべきESDの手法も浸透していないなど、ESDの導入は遅れている。

首都の国立チンバザザ動植物公園(以下チンバザザ)は、年間20万人以上が来園する同国最大の動植物園・博物館である。チンバザザとの連携協定のもと、仙台市八木山動物公園と宮城教育大学は2008年度より「自然保全のための環境教育実践プログラム研修」(JICA草の根技術協力事業)に取り組むなど、 ESDの素地が固まりつつあり、そのような中で昨年、宮城教育大学は昨年、国際協力イニシアティブ事業として「動物園を活用したマダガスカルのESDパイロットマテリアルの構築」を着手した。

昨年度事業では、本学のこれまでの実績を活用し、JICAマダガスカル事務所・JICA東北との連携協力によって、新しい子ども像の育成にマッチする ESDパイロットマテリアルを提案した。自然保護そのものではなく、子供の主体的に学ぶ力の育成を目的とする分かりやすいESDプログラムを集めたマテリアルはマ国にとって最も必要な教育のための教材であるとして評価され、連携する小学校の授業、チンバザザによる教員研修や出前講座、園内の展示などですでに使用されている。また、国立教員養成学校からは、マテリアルを活用するための共同研究を行いたいという申し出もある。ESD普及のための鍵となる組織をチンバザザに確立できたが、体験型学習支援を進めるための教材整備はまだ十分ではない。すでに調査によって、現地に対応した教材の質の把握を行っており、今後、ESD推進の鍵となる組織の拡充に加え、特にマテリアル普及のため学校にESD浸透を図るための教材(教育の手法と内容)を、JICAのJOCVなどからの協力を頂き、整備していく。途上国には、マダガスカル同様、自然資源に恵まれる国々が多く、動物園・博物館等の社会教育施設に資源や情報が集まりやすいことから、これらの社会教育施設を核とするESDの教材整備・発信モデルとして、また学校教育・村落開発・環境教育・青少年教育などの分野で活動する各国のJOCVに利用可能な教材として、本事業の成果の活用が期待される。

本事業の課題は、開発マテリアルの普及活用モデル形成のために、次の活動を行うことである。

【活動1】は、パイロットマテリアルの自立的使用のための改良・充実である。プログラムの中に含まれるESDの要素(体験・参加型であること、比較、思考、ディベート等の手法の導入、提示された課題を多面的にとらえつつ自分の意見を形成・表現する学習法)を指導するための、指導者向けの簡単な副読本(指導要領)を作成するとともに、プログラムの実践によってつく力が、ESD におけるどのような技能習得に位置付けられるものかわかるように、プログラムに解説を加え指導者が意識的に指導を行えるようにする。

指導者向けの改良に伴い、含まれるプログラムを日本でいう「発展学習」「探求学習」に位置づけ、日本の教科書の構造を参考に、理科・社会・道徳等の教科教育にマテリアルを関連付け、指導者が教科教育と関連付けてESDプログラムを活用できるようにするとともに、プログラムの中でボトムアップ的な(課題解決型、探求型の)ESD学習を可能にする教材を整備し、教科の「探求型学習」実践によってESDの技能が習得できるような構造を作り出す。

【活動2】は、マテリアルの現場での実証である。日マの指導者(学校の教師・動物園の指導者)によるモデル授業の実践、チンバザザスタッフによる教員養成学校におけるモデル研修を行い、参加するマ国の教育指導者が、プログラムの検討を行う場(ESDを導入した教育プログラム実践シンポジウムもしくはセミナー)を設ける。その場を、パイロットマテリアルを適切に活用するための条件(実施の場所、動物園が提供すべき情報、教師の質、教師が受けるべき研修など)を検討する場と位置づける。資源に恵まれるチンバザザへのモデル機関としての期待は高く、マ国関連機関との協力体制は整備されている。会議での検討を通じて、すでに指導体制のできているチンバザザを中核機関とし、マダガスカル側で要望のある教員養成教育への導入や指導者講習につなげるほか、さらにマ国内外の動物園・博物館等、社会教育施設で役立ててもらうことにつなげたい。

以上の成果を「動物園を活用したマダガスカルのESDパイロットメソッド」及び活動報告書としてまとめる。

2 目標

本事業では、昨年度開発したパイロットマテリアルの改良と現場での検証を実施し、動物園の豊富な教育資源を活用した質の高いESDマテリアルを完成し、普及を可能にする。
【目標1】は、パイロットマテリアルの改良・充実である。マテリアルに含まれるプログラムを日本でいう「発展学習」「探求学習」に位置づけ、教科教育に基礎をおくESD学習を可能にするためのプログラム改良を行う。ボトムアップ的な(課題解決型、探求型の)学習を可能にする教材を整備し、その実践によってESDのどのような技能が習得できるか対応付ける。新学習指導要領と教科書を参考にしながら、教科の学習内容とマテリアルを対応付けた指導者用の副読本を作成する。
【目標2】は、マテリアルの現場での実証と活用範囲の拡大化である。
パイロットマテリアルを活用するモデル授業・研修を実施し、その有用性とESDの学校教育への導入を、キーとなる検討組織(活動実施者、チンバザザ動物園、学校関係者、JICA)で検討する。次いで、ESD普及および学校教育への還元に関する組織的検討の場を設置する。教育省関係者、学校関係者、一般市民が参加するESDを中心としたシンポジウム・セミナーを開催し、ESDの浸透、特に学校教育への導入を図る。
二つの活動の成果を改定版マテリアル「動物園を活用したマダガスカルESDパイロットメソッド」にまとめる。

3 成果物

  • ESD指導者向けマテリアル「動物園を活用したESDパイロットメソッド(仮称)」(CD版、ダウンロード可能なWeb版、冊子)
  • 活動報告書「マダガスカルをモデルケースとする動物園ESDの推進(仮称)」(CD版)
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