日系社会青年ボランティア「現職教員特別参加制度」活動支援のための教育協力システムの形成
愛知県立大学
1 概要
本事業では、JICA日系社会青年ボランティアとして、平成21年度から開始された現職教員の活動の質の向上、及び、帰国後、外国籍児童生徒に対する指導につなげるための経験知の共有・問題解決支援のためのシステム構築を目指す。
日本、ブラジル両国間の移動を繰り返す児童生徒が増加し、彼らに対する継続的な教育支援が求められている現状を考慮に入れ、平成21年度の活動では、愛知県を中心とした日系ブラジル人集住地区の日系ブラジル人児童生徒への教育支援を行っている公立学校、NPO団体、ブラジル学校等の教育実践者やJICA日系青年ボランティアＯＧからさまざまな形で意見聴取をし、また日本とブラジルの学校文化の違いをまとめる一方で、具体的な教具の提案をするなどした。その活動を通してわかったのは、支援者たちの情報共有の困難さである。インターネット上でさまざまな情報を享受できる時代でありながら、日々の教育活動の多忙さもあり、教育現場で行われているさまざまな教育実践の工夫やノウハウ、問題解決の方法、課題などについて、個別の教育現場から教育界へと広く伝達することは非常に難しい。
そこで本年度は、本事業が教育協力の情報ネットワークの拠点となるような役割を果たしながら、現職教員のブラジルでの活動にも寄与し、かつ教員として帰国した後にも活動で得た能力が還元できるような支援のあり方を意識し、以下のような活動を行う。
- 教室活動事例のデータベース化
ブラジルでの日系青年ボランティアの過去の教室活動や日本での外国人向けの活動、現在の隊員の活動などについて、質問フォームを作成し教室活動の事例をまとめる。各自が工夫した教材の画像なども添える。優良事例を動画で配信することも考えている。隊員への直接的支援ともなり、かつ教育委員会や国内の教員にも役立つような事例集の作成を目指す。
- 日本国内での外国人児童生徒支援の体制とブラジルへの帰国者の支援についての調査，整理，紹介
国内における外国人児童・生徒指導のシステムが整っている事例について、聞き取り調査をし、取り組みの内容やその効果をまとめ、紹介する。また、デカセギからブラジルへと帰国する子どもたちの支援体制についても内容や効果をまとめ、紹介する。
- JICA現職教員特別参加制度から帰国後の、教員の活用推進のための提案
隊員の受け入れ先の現状をふまえ、帰国後を意識した活動をしてきてほしいという国内ニーズと照会し、個別の隊員の自助努力に担わせるのではなくプログラムの中に組み込まれるような提案をしたい。
- 現地調査
ブラジルへの帰国者の支援のあり方の調査や，JICA隊員の活動状況を把握する事を目的に現地調査をする。隊員の帰国後の活動に繋がるよう、昨年度の教材の成果物を現地活動中の隊員や現地の教育関係者に対して具体的な活用法などを説明する機会を設ける。
- 報告会と意見交換会の開催
上記１，２について，情報共有をする場として報告会を開催する。また、これらは国内外でブラジル人の子どもの教育に関わる人々に有益な情報となることが予測されるため、情報をできるだけ公開することを前提とする。また、上記３について、教育関係者やJICA関係者などとともに、帰国後の隊員の活躍の可能性についてブレーンストーミングの場を提供するような意見交換会を開催する。以上のような活動のすべてについて、日本語のみならずポルトガル語でも発信する。
2 目標
上記の具体的活動について以下のような目標を定める。
- 教室活動事例のデータベース化
現地活動の及び帰国後の活動に応用可能なデータベース作成を目指す。活動事例の工夫や内容が一目瞭然となるようテンプレートシートを作成してできるだけ多様な教室活動が紹介できるようにし、併せて動画も作成し配信する。
- 日本国内での外国人児童生徒支援の体制とブラジルへの帰国者の支援についての調査，整理，紹介
日本国内における支援体制を調査し紹介することで、隊員の帰国後の活用のあり方について、隊員や教育委員会に対して考える手だてを共有することを目的とする。また、隊員本人がブラジルでの現地活動中に日本の事情を詳しく知ることで、具体的活動について積極的な意義をみつける手だてとしたい。さらに両国の現状を知っておくことも有益であるため、ブラジルでの支援のあり方についても情報共有することを目標とする。
- JICA現職教員特別参加制度から帰国後の、教員の活用推進のための提案
派遣される隊員に対しての現地ニーズを整理しつつ、教育現場への復職が確実である現職教員に対する国内ニーズとの整合性を図り、活動の質を向上させ、さらに関係者間の意見交換会を行うことで、帰国後の活用イメージをつかむことを目標とする。
- 現地調査
JICA隊員の活動状況の把握やブラジルへの帰国者の支援についての調査を目的とする。また、現地において、昨年度の成果物である教材の具体的な活用法を提案、意見聴取するなども目標とする。
- 報告会と意見交換会の開催
JICA現職教員特別派遣制度にかかわるさまざまな組織や、ブラジル人の子どもの教育にかかわる、多方面の立場の人員間の情報共有と、帰国後の隊員の具体的な活用のアイデアなどを検討し、活用策が提案されることを目標とする。
3 成果物
本事業による成果物として予定されるのは以下の４点である。
- 教室活動事例集
- 外国人児童生徒支援体制要覧
- JICA現職教員特別参加制度から帰国後の、教員の活用推進のための提案
- すべてをまとめた活動報告書
