開発途上国における女子教育支援のモデルの構築―日本における女子教育経験の応用可能性―
お茶の水女子大学
三浦 徹
1. 概要
本事業では、日本における女子教育の発展を分析することを通して、現在国際社会の中でも重要な課題とされている開発途上国の女子教育支援について調査研究を行い、援助機関の支援政策などの分析を行うことを通して開発途上国における日本の女子教育支援のモデルの構築を目指す。
そのためには、五つの段階をふまえる。
- 女子教育の必要性を考察する:日本の事例、開発途上国の事例、先行研究をふまえて
- なぜ女子教育が必要なのか
- 女子教育を促進することでどのような社会発展がえられるのか
- 国際機関、先進諸国の援助機関、国際NGOなどの女子教育支援プロジェクトを比較・分析する。
(資料収集:H18実施済、分析:H19年度)
- 途上国における事例研究
- アフリカ地域(ケニア)
- 小学校に入り、女子生徒の就学状況、修了状況について調査を実施する(H18実施済)。また、初等教育修了を阻む要因や中等教育の進学に関して、教員、女子生徒に対しインタビュー調査を行なう。
→ 初等教育の修了を阻む要因の解明(H19実施)
- イスラム諸国(イエメン・アフガニスタン:H18実施済、バングラディシュ:H19実施)
-
- イエメン
- 日本の女子教育支援プロジェクトの視察
- アフガニスタン
- 紛争後の女子教育支援研修事業からの知見
(教員支援による女子教育支援)
- バングラディシュ
- コミュニティレベルから見た女子教育支援
(女子教育の必要性と実態について:調査→分析→検証)
- 日本の女子教育の知見と途上国の事例研究、援助機関の女子教育支援プロジェクト分析から日本の女子教育支援モデルを構築する。
- 初等教育修了の壁をこえる女子教育モデル
- 日本、イスラム圏、サブサハラアフリカの3つの地域間比較により、地域にねざした等身大のモデルを照準とする(補足説明参照)
- 本事業からの日本の女子教育支援モデルの検証
- タイ、ユネスコ事務所におけるモデル検討会
- 日本国内における女子教育支援関係者(研究者、援助機関など)との検討会
- バングラディシュ、コミュニティにおける女子教育支援モデルの検証
2. 目標
- 開発途上国におけるドナー国側の女子教育支援政策の分析
- 開発途上国の女子教育支援に関するプロジェクトの現地調査及び分析
- 我が国における途上国への女子教育支援に関するモデルの構築、及び検証
<補足>
本事業では、先進国・日本の女子教育の経験を生かした開発途上国の女
子教育支援モデルの構築を目指す。
2001年に出された「ミレニア
ム開発目標(MDGs)」では、「普遍的初等教育の達成」や「ジェンダー
の平等の推進と女性の地位向上」が提言されている。1990年のEFA以降、女子
の初等教育に関する就学率も援助機関や各国の政府の努力によって上昇の傾向
にある。しかし、初等教育の修了年限まで在籍している女子は少ない。また、
中等教育に進学する女子の割合は男子の半分から3分の2程度という現状である。
社会的、宗教的、経済的影響を受けやすい女子は、初等教育を受けてい
る4年生以降に、家事労働や結婚、出産などの理由から学校を退学する事例が
多い。女子には「読み・書き・算」だけではなく、男子と同様の教育を受ける
権利があることはいうまでもなく、出産や子育てなどをになうことから女子が、
保健や栄養など多分野にわたる教育を受ける必要がある。さらに、女性が自立
できるための手段としての技術などを身につける場としても、小学校高学年か
ら中等教育にかけての学校教育が求められている。日本の女子教育の発展にお
いても、職業教育をふくむ女性のライフサイクル全体にわたる教育が重要なモ
メントとなっていた。
そこで本事業では、女子が初等教育を修了し、中等教育に進学するため
にはどのような支援が必要かについて、現地調査や資料分析、援助機関との意
見交換にもとづき、日本の知見にもとづく女子教育支援モデルの構築を行う。
(別図参照)
3. 成果物
- 日本社会における女子教育(初等教育から高等教育まで)の分野の役割について(明治期から昭和期)報告書作成
- 援助機関による女子教育支援に関するプロジェクト評価(比較分析)の報告書作成
- 日本における途上国女子教育支援モデルの構築と検証(報告書作成)
(報告書は、1冊にまとめる予定)
- ホームページ上での情報提供(研究会、日本の女子教育関する資料など)
4. 国内報告会資料